19世紀末から20世紀初頭にかけてのアメリカやイギリスの工場では、工員がわざとゆっくり仕事をし、1日分の仕事量が増えないようにしていたそうです。これを怠業と呼びます。実は、当時の給料は出来高払いだったのですが、精を出して働いて給料が増えると、会社側が工賃単価を下げるような事態が繰り返されたために、組織的怠業をするようになってしまったのです。
これは会社にも工員にもマイナス。
そこでアメリカの経営学者テイラーは、仕事と目標を科学的に決められないかと考えたわけです。目標を達成したら、割増賃金がもらえるような仕組みに強いました。また、課業設定のついでに、不要な動作を省き、早い動作に置き換えていけば、より効率的に生産できるはずです。この、動作研究で、アメリカのレンガ積み職人ギルブレスとその妻などは、作業効率を3倍にしてしまったそうです。
ところが、テイラーの考えた成果給的な差別的出来高給制度は失敗してしまいました。成果主義は100年前にも失敗しているのです。
それでも時間研究や動作研究の手法は、インダストリアル・エンジニアリング(IE)として、今も生き残っています。
ギルブレスを逆に読ませたサーブリッグ記号や1分を100等分にしたストップウォッチなどは、今も工場の現場でカイゼンに使われていますが、実は、科学的管理法の名残なのです。