インダストリアル・エンジニアリング

頑張れば頑張っただけ稼げる仕組み

19世紀末から20世紀初頭にかけてのアメリカやイギリスの工場では、工員がわざとゆっくり仕事をし、1日分の仕事量が増えないようにしていたそうです。これを怠業と呼びます。実は、当時の給料は出来高払いだったのですが、精を出して働いて給料が増えると、会社側が工賃単価を下げるような事態が繰り返されたために、組織的怠業をするようになってしまったのです。

これは会社にも工員にもマイナス。

 

 そこでアメリカの経営学者テイラーは、仕事と目標を科学的に決められないかと考えたわけです。目標を達成したら、割増賃金がもらえるような仕組みに強いました。また、課業設定のついでに、不要な動作を省き、早い動作に置き換えていけば、より効率的に生産できるはずです。この、動作研究で、アメリカのレンガ積み職人ギルブレスとその妻などは、作業効率を3倍にしてしまったそうです。

 ところが、テイラーの考えた成果給的な差別的出来高給制度は失敗してしまいました。成果主義は100年前にも失敗しているのです。

それでも時間研究や動作研究の手法は、インダストリアル・エンジニアリング(IE)として、今も生き残っています。

ギルブレスを逆に読ませたサーブリッグ記号や1分を100等分にしたストップウォッチなどは、今も工場の現場でカイゼンに使われていますが、実は、科学的管理法の名残なのです。

サーブリッグ分析記号の説明

青色の第1類・・・価値を生み出す必要な作業だが、距離や時間など短縮できるところは改善する。

黄色の第2類・・・できればなくしたい動素。

赤色の第3類・・・ムダな作業なので、完全に取り除く必要がある。

  1. 空手移動:モノに近づいたり離れたりする動作。まだ手には何も持っていない。空の皿の形の記号。
  2. つかむ:モノをつかむ動作。モノに触れた瞬間から次の要素へ移行するまで。磁石の形の記号。
  3. 運ぶ:モノを持ったまま場所移動する動き。お皿にモノを乗せて運ぶ形の記号。
  4. 位置決め:使いやすいようにモノの位置を正す動作。
  5. 組み合せる:ものを組み合せる動作。
  6. 分解する:組み合せたモノを分解する動作。
  7. 使う:器具や装置を使ってモノの状態を変化させている動作。コップを上向きにして使う形の記号。
  8. 手放す:モノを手から放す動作。皿を逆さにした形の記号。
  9. 調べる:モノのサイズや色、形などを検査する動作。レンズ形の記号。
  10. さがす:対象物がどこにあるか目でさがす。目でモノをさがす形の記号。
  11. 見出す:目で対象物をさがし当てたときの動き。
  12. 選ぶ:複数のものから目的のものを選択するときの動作。目的物を指し示す記号。
  13. 考える:作業そのものに入る前に考える動作。頭に手を当て考えている様を表した記号。
  14. 用意する:モノを使用後、次回次回位置を正す動作をしないように、使いやすい位置に置く動作。ボーリングのピンの形の記号。
  15. つかまえている:モノをつかんだままでいる状態。磁石にモノが吸い付いている形の記号。
  16. 避けられない遅れ:自分ではどうにもならない遅れ。つまづいた形の記号。
  17. 避けられる遅れ:自身の意思で防ぐことのできる遅れ。よそ見や手を休める動き。人が寝た形の記号。
  18. 休む:疲れたために休む動き。椅子に座る形の記号。